今年も新入社員が職場に配属される季節になりました。苦労して採用した人材ですが、厚生労働省の調査では3年を経過するまでに、およそ3割の新入社員が退職することがわかっています。
全体としてこの「3年で3割」という数字は大きく変わっていませんが、大企業では2009年頃から上昇基調が続いています。さらに最近の特徴として、見込みのある若手ほど退職し、あえて労働条件の良くない中小企業やベンチャー企業に転職する動きが目立ちます。
大企業では「働き方改革」によって残業時間は減り、ハラスメントやメンタルヘルス対策も取られています。働く環境は確実に改善している一方、多くの若手社員は周囲から腫物に触るように扱われ、上司から叱られた経験もほとんどなく、負荷のかかる仕事を任されることもありません。こうした状況を評して、ある若手社員はまるで「親戚の子供」みたいな扱いだと語っています。
このため若手の中には、このままだと今の会社でしか生きていけなくなるのではないか、いざ転職しようとしても他社では使い物にならないのではないかという危機感を抱く人が少なくありません。
かつての若手社員の早期退職は会社や上司に対する「不満」が原因でしたが、現在は将来に対する「不安」が早期退職を加速させています。
世の中は変わりつつあるのに、自分はこのままで大丈夫なのか?
若手人材の意識の変化に気づいている中小企業では、大企業にない成長実感やキャリア上の経験を得られることをアピールし、第2新卒社員の確保に力を入れています。
これではまるで手間のかかる新入社員研修を大企業に外注し、スタートラインに立った人材を引き抜いているようなものです。
これに対し、一部の大企業は早期退職した若手を「アルムナイ」(同窓生・卒業生)として組織化し、定期的な接触や交流、情報交換を促進し、彼らとの協業や場合によっては復帰・再雇用を容認する動きも出始めています。
若手の人材確保の競争は新卒採用に留まらない段階へ広がりを見せているようです。