人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

これからの働き方を先取りしたG7サミットの舞台裏


5月に広島で開催されたG7サミットは、ウクライナのゼレンスキー大統領が飛び入り参加したこともあり、世界中から注目を集めました。

 

このサミットを報道する国際メディアセンターでは、世界各国の報道関係者や記者向けに食事が提供されました。そこで調理にあたる人たちの働きぶりは、これからの働き方を先取りしていました。

 

会場には全国のレストランや飲食店などから料理人・数十名が派遣され、ビュッフェスタイルの食事を朝・昼・夜に作ります。

 

国際メディアセンターのダイニングの様子

 

トップの責任者は集まったメンバーの経歴書を読み、話を聞いて何を作るかという仕事の割り振りを決めます。そして各自の仕事ぶりや出された料理が食される具合を見ながら、人員や役割分担を調整していきます。

 

これはジョブ型雇用(※)における仕事の進め方と言えます。

※ 最初に仕事や役割を決めて、そこに経験者を就かせる人事制度で、日本以外の諸外国では一般的なスタイル。日本では未経験者でも採用し、その後に仕事をさせながら育成する人事制度が主流

 

ジョブ型雇用の会社では、集められるメンバーはいずれも実務経験者やある種の専門家です。管理職やマネージャーは彼らの仕事ぶりに関与するのではなく、各自に目標を与え、役割に応じた配置を決め、仕事の進捗を管理しながら人員の調整をして、目標達成を目指します。

 

ジョブ型雇用における人材育成

国際メディアセンターでは、全員が同じ厨房で仕事をするため、他人の仕事ぶりを見ながら、自らで新しい発見や気づきを得るという人材育成が機能していました。

 

日本企業の人材育成は終身雇用と年功序列を背景に、上司が部下を指導するという縦の上下関係に基づくOJTが基本でした。上司は常に正解を知っており、部下は正解に辿り着くことを目指します。

 

しかしジョブ型雇用の会社では横の関係にあるそれぞれが、相手の仕事ぶりを見ながら自ら学ぶスタイルによる人材育成が中心になります。

 

横の関係からの学びに正解はなく、何をどんな風に学ぶかは各自に委ねられ、互いにフィードバックをし合いながらの学びになります。会社は全員に同じ研修を施すのではなく、互いに学べる場を作ることに専念します。

 

政府は現在、三位一体の労働市場改革を進めようとしています。これは①新たな時代に合わせた学び直しを行うリ・スキリング、②日本型の職務給の導入、③成長分野への円滑な労働移動の3つから成ります。

 

G7のメインダイニングでは、いち早くこの動きが反映されていたと言えそうです。