キャッシュレス決済が広がり、現金を使う機会は減りつつある中、日銀は来年(2024年)、新札を発行します。1万円札の肖像は渋沢栄一に変わり、5000円札は津田梅子、1000円札は北里柴三郎になります。
日銀が約20年ぶりに新札を発行する理由としては、偽造防止や紙幣の製造技術の伝承などがあると言われています。また隠れた狙いとして、表に出せない裏金やタンス預金をあぶり出す効果も期待されています。
多くの裏金やタンス預金の背後には法人税や相続税の脱税が関係しています。紙幣を新しくすれば、大量の旧札は人目を引き、所有者の特定に繋がりやすくなります。
税負担を回避する目的以外にも、銀行が信用できないという理由でタンス預金をしている高齢者もいます。メガバンクの支店がたくさんある大都市と違い、地方では金融機関が少なく、中には経営基盤も盤石とは言い難い所もあります。
現在、アメリカでは地方銀行の経営破綻が相次いでいます。破綻の原因は経営不安から取り付け騒ぎが起き、大量の預金が流失したためです。
そしてこの経営不安の一因になっているのが中央銀行(FRB)による急速な金利の引き上げです。市場金利が上がることにより、金融機関が保有する国債や社債、住宅ローン債券などの価格が下落しているのです。
債券は満期まで保有していれば額面通りの価格で全額が償還される比較的安全な資産です。しかし、銀行は取り付け騒ぎにより現金が必要になると、償還前に購入価格を下回る現在の市場価格で債券を売却せざるを得なくなります。その結果、含み損が表面化します。
そして決算が赤字に陥ることで、さらに経営不安が広がり、預金が引き出されるという悪循環に陥っています。
日本でも日銀総裁が代わり、これまでの超金融緩和政策がいずれ終わり、金利が引き上げに向かう予想されています。すると米国と同じように国内の金融機関が抱える日本国債などの債券価格は下がります。銀行は決算時に評価損を計上せざるを得なくなり、アメリカと同じ状況に見舞われます。
こうなる事態が予想されるのに、国内の金融機関は債券を売ろうとしません。貸し出しが減りつつある中、債券を売ってしまうとメシの種がなくなるからという理由か、それともヨソが売らないから、ウチも売らないという横並び意識のためか、あるいは財務省や金融庁がいい顔をしないという「金融村」の忖度なのかもしれません。
金融機関の業績が悪くなると、高齢者の不安はさらに増し、タンス預金は表に出るどころか、逆に増えるかもしれません。タンス預金の増減は世の中の不安のバロメーターと言えそうです。