人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

なぜ日本はデジタル化が遅れているのか?

 

政府は賃金のデジタル払いを解禁したり、マイナンバーカードを健康保険証の代わりにするなど、デジタル化に向けた動きを推進しています。日本ではデジタル化が遅れていると言われており、キャッシュレス決済の普及率も30%程度とされ、ドイツと並んで利用が低調です。

 

日本のデジタル化が遅れている理由として現場の労働者が優秀な点が挙げられます。アナログによる手続きや支払いをしても現場の労働者がそつなくこなしてしまうため、デジタル化しなくても困るような場面が少ないのです。

 

たとえば諸外国なら行政手続きをしたら担当者が忘れていたとか、現金で支払いをしたら間違った金額を請求される、あるいは釣銭が誤魔化されるなどは日常茶飯事ですが、日本では滅多にありません。

 

 

一方、現場労働者の優秀さがマネジメント力の弱体化を招いている面もあります。

 

日本企業では顧客から無理難題なコストダウンの要求があっても、現場で創意工夫を発揮してなんとか克服してしまいます。このため経営陣や役職者は課題解決を現場に任せがちです。

 

ところが諸外国では現場の労働者がさほど優秀でなく、現場での課題解決が期待できないため、マネジャーは価格競争に巻き込まれないように差別化を図るなど、いかに高く売れるか、つまり高付加価値化戦略に知恵を絞ります。

 

このように日本の会社の競争力が現場にあるのに対し、諸外国ではマネジメントが競争力に直結します。

 

しかし日本の現場労働者がいかに優秀でも上位階層者が大局観を見誤れば勝ち目はありません。また社会がデジタル化すると、ゲームのルールが根本から変わってしまうこともあります。

 

強すぎる現場に依存したマネジメントの衰退が収益力の低下を招き、それが日本で賃金が上がらない原因の一つにもなっています。現場とマネジメントはクルマの両輪であり、どちらかに過度に依存した体質は変化対応力に乏しいと言えるでしょう。