人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

中国経済減速のウラ事情

 

各種の報道によれば、中国の経済が減速を続けているようです。大きな原因はGDPの3割を占めるとされる不動産セクターの不振です。

ここ数年、中国ではリーマンショックやコロナ対策などで膨大な資金を供給したため、不動産価格の上昇が続いていました。過熱した不動産投資を抑えるため、中国政府は2020年、銀行に対して不動産業界への融資の規制するように命じました。

この影響により、不動産デベロッパーは相次いで資金繰りが悪化、受注していた物件の工事も止まり、不動産価格も下落を続けています。デベロッパー大手、恒大集団や碧桂園は相次いで社債の利払いや償還ができないデフォルト(債務不履行)に陥っています。中国の不動産業者の約20%は債務超過の状態にあると言われています。

 

 

 

中国ではマンション購入者は物件の完成前にローンを組んで、支払いを済ませます。デベロッパーは受け取った予約金を使って物件を完成させたり、別のマンション開発に着手します。

工事が止まると物件は完成されないまま放置され、購入者はローンの支払いだけが始まります。こうした状況を見て不安になった消費者はマンション購入を手控えており、その結果、中国の銀行の個人預金残高は急増しています。

大幅な不動産価格の下落に伴い生じた損失=不良債権は、公的資金を使って処理をするしかない、というのが日本の不動産バブルの崩壊や米国のリーマンショックの教訓です。しかし現在、中国当局金利を下げたり、用意する頭金の額を減らすなど、もっぱら需要を喚起する施策を打ち出すだけで、不良債権の処理に手を付ける気配はありません。

当局が公的資金の投入をためらっているのは、モラルハザードの問題に加え、中国の地方都市における不動産開発を巡っては不透明な点が多々あり、中央政府が実態を把握ができないことも関係していそうです。

不動産融資には銀行の他に「シャドーバンク」(影の銀行)を通じた裏の資金供給ルートもあります。また本来は農民のための「小産権房」という住宅開発でも、乱開発とヤミ転売が行われています。このため一体、どこにどれくらいの不良債権があるのかが誰も正確に把握しきれていない状態です。

 

不動産バブルの後始末は遅れれば遅れるほど悪化します。日本でも90年代初頭に不動産バブルが崩壊した時、経営が傾いた銀行や会社を公的資金を使って救済するのは許せないという声が沸きあがりました。

その結果、不良債権の処理は遅れに遅れ、90年代の後半になって大手金融機関が相次いで経営破綻し、ようやく公的資金の投入が決まりました。

中国経済不良債権処理が遅れると不況が長引き、日本経済への打撃にも繋がります。中国の不動産業界を巡る問題は注意を払って見守る必要がありそうです。