人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

守りの姿勢が衰退を招く

昨年末の税制改正大綱でNISA・ニーサ(少額投資非課税制度)の拡充が決まりました。これによりiDeCo・イデコ(個人型確定拠出年金)の加入者・拠出額の拡大と合わせて、個人による株式市場での運用益や配当金に対する非課税枠が拡大されます。

 

政府がこうした減税を決めた背景には国民の資産形成を後押しすると伴に、2000兆円ともいわれる家計の資産を証券市場に誘導し、日本経済の活性化に繋げたい狙いもあります。

 

現在、NISAの口座を開設しているのは約1100万人で、総人口の約9%、iDeCoの加入者数の割合は社会保険の被保険者の約3.5%とまだまだ利用は低調です。家庭の総資産も85%は銀行預金や保険となっていて、株式や債券などは15%に過ぎません。

 

かつては銀行に預けられたおカネは企業に貸し出され投資につながりました。しかし現在は日銀の低金利政策にも関わらず企業の資金需要は乏しく、日本経済は大幅な投資不足の状態にあります。

 

そこで銀行を通じた間接金融だけでなく、個人の預貯金を証券市場に呼び込むことで成長資金を供給し、経済活性化に繋げようという目論見です。

 

 

多くの人が預貯金を株式や債券に移動させない理由の大半は「投資経験がない」からです。そのため何を、いつ、どれくらい買ってよいのかがわからず、元本割れも怖いという守りの姿勢につながります。

 

これは「コンフォートゾーン」(居心地のよい所)にいたいという人間の心理を反映した結果と言えます。人間には太古の昔より生命の危険を避けるため、新しい環境に身を置くことを避け、慣れ親しんだ世界に居続けることを好む習性があります。

 

この心理は会社経営やキャリアを形成する上ではマイナスです。従来の経営手法や習慣、スキルのまま既存の仕事を続けてしまい、変化する外部環境との間でズレが生じかねません。

 

「新しい酒は新しい革袋に盛れ」ということわざがあります。人間も経営も同じ環境にいれば新しさは生まれず、やがて衰退していきます。無意識のまま「ぬるま湯」につかっていないか、常に振り返りを怠らない姿勢を持ち続けることが求められます。