人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

なぜ経済格差は広がるのか?


日米の株式市場では主な株価指数が史上最高値を更新し活況を呈しています。しかし、上昇しているのは人工知能半導体といった一部の銘柄に偏っています。

こうした偏りは個人の所得にも見られます。国民所得全体に占める上位10%の人たちの所得割合は米国では48%、日本は44%になっており、この比率は年々高まっています。

つまり上位10%の人たちの所得は増え続け、その他の90%の人たちとの格差が広がっている格好です。

日本の場合、こうした格差が広がる原因の一つが「所得1億円の壁」と称されたりする税金の負担です。

全国に2万人いるとされる所得が1億円を超えるような人たちの多くは、最大45%の超過累進課税がかかる給与所得や事業所得よりも、株の売却による譲渡所得の割合が多くなっています。

そして、株の譲渡所得は一律約20%の申告分離課税で済むため、1億円の所得を境に税負担が減っていきます。

 

(令和4年10月18日 財務省作成・参考資料)

 


これに輪をかけているのが社会保険料の負担です。給与所得や事業所得には社会保険料がかかりますが、株の譲渡所得には社会保険料の負担はありません。

申告分離課税が適用される所得が増えるほど、社会保険料の負担率が減り、一部の富裕層はますます豊かになっていく、そうした構図になっています。

こうした事情のため、一般的な所得水準の人も社会保険料がかからない所得を増やせば、富裕層と同じ効果が得られます。

具体的にはNISA(少額投資非課税制度)を使って株式投資をしたり、会社からの給料を得ながら副業でも収入を得るようすれば、これらの所得には社会保険料はかかりません。

また社会保険の適用拡大により、新たに社会保険に入る一部のパート、アルバイトといった短時間労働の人たちも、給与所得以外の収入を増やせ社会保険料の負担率は少なくなります。

今後は、税負担だけでなく、社会保険料の負担にも注意を向ける必要があると言えるでしょう。