最近の職場では「静かな退職」という働き方が広がっているようです。これは実際に退職はしていないものの、会社や仕事とは距離を置き、心理的には退職した人のような働き方をしている状態を指します。
「静かな退職」を選んだ社員は、余計な仕事はせず、残業も極力避け、昇進・昇格などに興味を示しません。
最初に「静かな退職」という働き方を唱えたのはアメリカのキャリア・コーチ、ブライアン・クーリー(Brian Cooley)と言われています。
彼は2022年に動画投稿サイトTikTokで、あなたの人生は仕事で決まるわけではない、だから上司や会社の期待を超えてまで働くのは止めて、静かな退職(Quiet Quitting)をしようと呼び掛けました。
仕事をさぼったり、手を抜くのではなく、会社や上司の期待以上の仕事を引き受けるような働き方は止めようという主張です。これがアメリカの若手社員の間で注目を集め、大きな反響を呼び起こしました。

日本でも広がりつつある「静かな退職」は、2つのパターンに分かれます。
一つは今の仕事内容や人間関係といった環境が原因で、「静かな退職」に至っているケースです。この場合、異動や配置転換によって仕事や人間関係が変われば、「静かな退職」も解消に向かう可能性があります。
もう一つは、人生における仕事の位置づけが低いケースです。このパターンの人は、人生には仕事以外にも大切なものがあり、仕事は時間を費やすべき対象の一つに過ぎません。
総じて「静かな退職」に向かいやすいのは、総合職のように会社の都合で仕事を転々として、仕事に「やらされ感」が付きまとい、仕事と自分の間に疎外感が生じやすい人です。
一方、専門職や技術職、技能職(職人)のように腕に覚えのある人は、仕事と自分の間に一体感が生じやすく、比較的「静かな退職」に至りにくいと言えます。
昨今は人手不足により転職のハードルは下がり、会社員という働き方以外の選択肢、キャリアも増えてきました。「静かな退職」はこれからも広がりそうな気配が濃厚です。