人事コンサルタントのお仕事日誌

人事労務管理のコラムとFPエッセイ

iDeCoとNISA 活用時のキーワード

将来の年金資金を用意したり資産拡大を目指す手段として、あるいは長期化するインフレに対する資産防衛の観点から、iDeCoやNISAが注目されています。

これら2つの目的は違いますが、自ら選んだ投資商品を金融市場で運用するという点は同じです。今回はiDeCoやNISAを利用する際の重要なキーワードを取り上げます。

 

複利効果と分散投資

まず 複利効果 があります。複利効果とは投資によって生み出された利益が、再投資されて利益を生むという効果です。これにより投資した元本が増えるスピードが加速し、時間の経過とともに資産が膨らんでいきます。


例えば年5%という標準的な利回りで約15年間運用を続けると、投資した元本は約2倍に成長します。従って投資は時間を味方につけ、長期に渡り取り組むことが重要です。

次は 分散投資 です。まずは時間を分散させるのが「積立投資」です。積立投資とは投資信託などを毎月定期的に一定額を購入し続けることです。投資信託の価格が下がれば多くの買い付けができ、価格が上がれば少額の買い付けになります。この手法は ドル・コスト平均法 と呼ばれています。

積立投資により、いわゆる「高値づかみ」を避け、市場の変動に左右されることなく、長期間にわたってコツコツと資産を増やすことに繋がります。積立投資は投資商品を購入する時間を分散させ、市場の変動(ボラティリティ)に対する耐性を高める助けになります。

もう一つが「投資先の分散」です。これは異なる値動きをする資産クラスや市場に投資することです。これにより一つの投資先、セクターが不振に陥っても資産全体への影響を軽減できます。

例えば株式だけでなく、債券や不動産など株式と異なる値動きをするタイプの資産に分散して投資することで、リスクを抑えながら収益を確保することができます。あるいは投資先を特定の国だけにせず、複数の国や地域にも広げます。こうした投資先の分散は 資産配分アセットアロケーション)と呼ばれます。

 

資産配分を考える際のポイント

安定的な資産配分(アセットアロケーション)を考えてみましょう。まずは自分の投資目標とリスク許容度を明確にし、それぞれの資産クラスの特徴を確認した上で、リスク(値動きの幅)を分散させる組み合わせ(ポートフォリオ)を構築します。

株式は値動きが大きい分、値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できます。逆に債券は株式に比べると値動きが小さく、安定的に金利収入(インカムゲイン)が得られます。また先進国への投資は安定していますが、成長率の大きさという果実は新興国への投資に軍配が上がります。

一般的に年齢が低いほど運用できる期間が長くなるため、リスク許容度は上がります。逆に定年が視野に入ってきたり、扶養家族がいる、住宅ローンを組んでいるといった人のリスク許容度は下がります。投資している商品の価格が値下がりすると、心配で夜も眠れないといった人もリスク許容度は低いと言えるでしょう。

資産配分する際は、投資先と自分の特徴を踏まえた上で、異なる値動きをする資産を組み合わせるのがポイントです。こうすることで、どんな経済状況であっても安定的な資産運用が図れます。

投資商品同士の値動きをは相関係数によって示されます。相関係数は1に近いほど、2つの価格は同じように動き、-1に近づくほど、両者の動きは正反対になります。

年金積立金管理運用独立行政法人の資料より

この相関係数表によると、外国株式と国内株式の相関係数は 0.643 と最も1に近く、同じような値動きをすることがわかります。外国株と国内株を同時に保有するのは分散効果が低いと言えます。逆に国内株式と国内債券は -0.158 とマイナスになっていて、互いに異なる値動きをすることが読み取れます。

一般的に好景気になると企業業績も好調なため株価は上がり、株式が有利になります。しかし好景気が続き、物価が上昇すると中央銀行金利を引き上げるため、高い利息が見込める債券の出番です。また〇〇ショックや自然災害、戦争、パンデミックといった通常は想定されていないような出来事が起きれば安全・安心をもたらす金(Gold)が値上がりします。

そして一定程度の現金があれば、不意な出費に迫られても運用している投資商品を途中で売却せずに済みます。また価格が下がった時などは買い増しをして、平均購入単価(簿価)を下げることもできます。

 

具体的な資産配分の事例

日本の公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、現在、日本の株式・債券と外国の株式・債券に25%づつへの配分を基本にしています。

 

ウォール街で年金資金を運用しているファンドなどの伝統的な資産配分は株式6割、債券4割と言われています。また米国の著名な作家で投資家のハリー・ブラウン(Harry Browne)が唱えた「パーマネント・ポートフォリオ」では、株式・債券・金(Gold)・現金を均等に25%づつの配分とします。

資産を運用していると、特定の資産額が大きく変動し、最初に設定した配分割合が崩れてしまうことがあります。そこで資産配分は数年に1度は確認して、調整(リバランス)をします。設定した割合を超えた資産は一部売却して、その金額でシェアが低下した資産を購入して、バランスを元に戻します。

せっかく値上がりした資産を売って、わざわざ値下がりしている資産を購入するのは心理的に抵抗があるという人も多いです。人間は理屈は正しくても、心理的な感情に左右され、合理的な行動ができない生き物です。資産運用は人間心理との闘いという側面もあります。

投資はリスクが伴いますが、複利効果を得つつ、分散投資を継続しながら、自分に適した資産配分を目指すことで安定的な資産運用が図れます。自分の目標を明確にし、着実なステップを踏むことが賢い資産運用と言えるでしょう。