コロナ禍により注目された テレワーク ですが、最近は利用が伸び悩みの状態にあるようです。
テレワークが広がらない理由として挙げられるのは、社内のコミュニケーションが減り、仕事に支障があるからというものです。
日本の会社では人に仕事を付ける仕組みのため、社員ごとの仕事の区分けが明確ではありません。部署の責任者は全体の業務量や部下の仕事の進み具合を把握しながら、状況に応じて仕事の割り振りを変え、現場を回しています。
このためテレワークになると、部下が今どんな状況にあるのかがわからず、適切に仕事を割り振れず、業務の遂行に支障が出るのです。
また日本人特有のコミュニケーション・スタイルにも理由があります。日本は世界中で最も「ハイ・コンテクスト」(high context)な文化圏であると言われています。これは文章の意味(コンテクスト)がその前後の文脈によって大きく変わるというものです。
例えば、上司が部下に「例の件、よろしく頼むよ」と言えば、「例の件」が何かを特定されなくても、これまでの話の流れを踏まえて話が通じます。親が子供に向かって「テレビがうるさい」と言えば、子供は音を下げなさいと言われなくてもボリュームを下げます。
こうした「ハイ・コンテクスト」な国としては、日本以外に中国、韓国、インドネシアなどがあります。
「ハイ・コンテクスト」なコミュニケーションでは、会話は繊細になり、含みやほのめかしが多くなり、話の内容は重層的・多層的になります。空気を読んだり察しや忖度が大切になるため、テレワークになるとコミュニケーションが成り立たず、意思の疎通に支障を来します。
この反対の「ロー・コンテクスト」なコミュニケーションの米国、オーストラリア、カナダ、オランダなどでは、曖昧さを排した厳密でシンプルな話し方が好まれます。言葉に裏表がなく、重要な話ほど何度も繰り返されます。
商談で購買担当者が「検討します」と言えば、提案は本当に検討されるため、「では、いつ結論が出るのか」と話が進みます。日本の商談における「検討する」が、大半が却下を示唆するものの、担当者や状況によっては脈があるといった曖昧さはありません。
ハイ・コンテクストな日本の中で例外なのがアニメです。アニメは生身の人間のように微妙な心情や言外の意味は伝えきれないため、文字やセリフを使って補足します。これにより「ロー・コンテクスト」な文化圏の人々にも伝わりやすくなります。
日本のアニメが世界中で人気を集めているのは、ハイ・コンテクストによる邦画のわかりにくさを、ロー・コンテクスト化でわかりやすくしていることも背景事情としてあります。
ただし日本の中でも少数ながら「ロー・コンテクスト」なコミュニケーション・スタイルの人はいるため、そうした相手にはあえてストレートな表現で伝えてみる方が効果があるかもしれません。